宮崎に、IT・DX人材2万人の雇用を。地方のサステナブルな未来を考える
地方都市の中でもIT関連企業の活躍が目覚ましい宮崎。地元のITベンチャーの躍進はもちろん、近年は大手IT企業の移転やサテライトオフィスの誕生、海外のIT人材の採用など「宮崎IT経済圏」は着実に拡大し続けています。
そこで考えたいのが、宮崎の「IT・DX人材2万人」ビジョンです。人口減や労働力不足が叫ばれる地方において、ITを軸に据えた取り組みはサステナブルな社会を形成する可能性を秘めています。
今回は過去にご紹介した沖縄や宮崎のIT関連の事例なども参考にしながら、IT・DX人材2万人について考察します。
IT人材の集まる都市として成功した沖縄
観光やリゾート産業のイメージが強い沖縄ですが、近年IT業界において大きな注目を集めています。背景にあるのは沖縄のIT関連誘致の雇用者数の大幅増です。
沖縄県が提供している情報通信産業(ICT)向けの企業立地ガイドによると、2021年の沖縄県内の情報通信関連企業数は912社。これは2015年の762社から約2割の増加で、県外からの立地企業数も501社にのぼります。特筆すべきはIT関連の雇用者数。2021年現在でその数は約4万人に達しており、沖縄の一大産業へと成長しています。
沖縄では長年官民が連携してIT企業の誘致や通信環境の整備、雇用の確保を推進。これに呼応して沖縄に拠点を置くIT企業が増加し、現在の規模へと到達しました。沖縄はアジア地域と地理的に近いメリットがあり、国が指定した経済特区として税制上の優遇措置が充実している点もITビジネスにとって追い風となっています。
ITビジネスの特性を考えれば宮崎でも沖縄の事例を再現できる
ここで考えてみたいのが、「沖縄の事例を他のエリアでも再現可能か」という点です。結論から述べれば、再現は可能だと言えます。これはITビジネスの特性を考えてみるとわかりやすく、ITは物理的な距離や国境、都市の市場規模や人口といった要素に左右されません。極端な表現をすれば、パソコン一つでビジネスができるのがITの最大の利点です。
沖縄の事例はもちろんですが、宮崎でIT関連企業の活躍が目覚ましいのは、こうした強みを存分に活かしているため。宮崎に拠点を置くIT関連企業のビジネスは県外のクライアントがほとんどです。デジタルツールやオンラインMTGといったテクノロジーを使って、東京、大阪、名古屋といった国内の主要都市圏はもちろん、海外とも宮崎に居ながらビジネスをおこなっています。
こうした現状を踏まえれば、宮崎でも沖縄のようにITを一大産業へと成長させる可能性は十分にあると言えます。
なぜ2万人なのか?数が生み出すパワーとサステナブルの実現
さて本記事では宮崎のIT・DX人材の目標を2万人と設定しています。ITビジネスの特性を考えれば、少人数でも大きな売上を稼ぐことは可能です。しかしあえて2万人という大きな数字を目標に据えたのには理由があります。
株式会社SHIFTの代表取締役である丹下大氏は、自身のブログで「数はパワー」と述べています。少数精鋭でも市場で戦えますが、本当に優秀な人材を集めるには母数を広げなければなりません。丹下氏は同ブログにて、ピラミッドの頂点を高くするには、その土台を広げる必要性を強く述べています。
これは地方のITビジネスでも同じで、限られた数の企業や従業員が高いパフォーマンスを発揮するだけでは、サステナブルな社会は築けません。一時的な活況を目指す瞬間風速的なアプローチではなく、きちんと雇用の数を確保し、しっかりピラミッドの土台を広げる取り組みがサステナブルな社会を実現します。
宮崎のITベンチャーが示した成功事例
実は宮崎ではすでにこうしたアプローチから生まれた成功事例があります。2020年にZOZOに吸収合併されたアラタナは、宮崎発のITベンチャーとして創業から13年間、地方都市で全国をフィールドに事業を展開してきました。そんなアラタナが掲げていたのが「宮崎に1,000人の雇用をつくる」というビジョン。
このビジョンはアラタナを巣立ったメンバー達に受け継がれており、10人に1人がアラタナから起業し経営者として宮崎で活躍しています。1,000人雇用を掲げ数多くのメンバーを採用し、ITという領域で切磋琢磨する土壌を築いたからこそ、未来を担う起業家たちが次々と誕生したと言えます。
起業によりあらたな雇用が生まれ、さらにそこでスキルや経験を身に付けた人材が次の起業家へと成長していく。都市部や世界と同等の案件を地方でも取り組めるIT産業であれば、高いスキルを持った人材の成長も見込めます。こうしたサイクルがうまく回りはじめれば、地方都市でもサステナブルな社会を形成できるわけです。
まとめ
今回は宮崎のサステナブルな未来を考える題して、「IT・DX人材2万人」のビジョンについて考察しました。
沖縄県では官民が連携したIT誘致や環境整備が功を奏し、2021年現在で約4万人のIT関連雇用を生み出しています。この事例は決して沖縄が特殊だったわけでなく、時間や場所に縛られないITビジネスの特性を考えれば全国の地方都市でも実現可能です。
とくに宮崎は地方においてIT関連の経済圏が成熟している土壌といえます。地元のITベンチャーの成功事例もあり、今後官民が連携してIT・DX人材2万人というビジョンへアプローチできるポテンシャルを秘めています。ITを軸に据えたアプローチは、少子高齢化や働き手不足が叫ばれる地方における課題解決の1つとして注目する価値が十分にありそうです。