【2023年下半期】地方でのIT誘致に関するトピック

半期に一度、地方を中心としたIT誘致に関連するトピックをお届けする本企画。

2023年下半期の動向をふり返ると、地方でのIT誘致の大きな波はいったん落ち着きを見せているように感じます。一方でコロナ禍からの本格的な「リアル回帰」という視点からは、IT誘致に関連しそうなトピックがいくつか見られます。

今回はこうしたトピックをご紹介しながら、今後の地方IT誘致の動向について考察します。

脱コロナが本格化│2023年下半期のIT誘致に関連するトピック

2020年初頭から世界各国を混乱の渦に飲み込んだ新型コロナウイルスの感染拡大。日本国内でもウイルスは猛威をふるい、地方・都市圏に関わらず社会生活は大きな変化を強いられました。それから約3年半が経過した2023年5月、日本は感染症法上の位置づけを5類に移行。これにより社会は本格的な脱コロナへ歩みはじめています。

脱コロナが加速するなか、地方のIT誘致の動きにも変化が見え始めています。注目すべきトピックを見ていきましょう。

1.リモートワーク終了の動きが増加

コロナ禍の社会変化で象徴的だったのがリモートワークの導入です。リモートワークと相性の良いIT関連企業は積極的な導入を進め、それに比例して地方への本社移転やサテライトオフィスの開業などIT誘致の動きが加速しました。しかし5類移行により、多くの企業でリモートワークを終了させる動きが増えています。

業務効率の改善や働き方の多様化といったメリットがある一方で、社内でのコミュニケーション不足や会社へのロイヤリティが希薄化するといったデメリットが顕在化。IT関連企業でも出社を原則として、リモート勤務を組み合わせる形態を採用するなどコロナ以前の働き方に戻す傾向が強まっています。

ここ数年地方のIT誘致では、リモートワークを前提とした誘致活動がメインでした。リモートワークが終了し出社が前提となると、誘致活動の在り方も変化が予想されます。

2.脱コロナであらためて人口の都市圏一極集中の動きが

リモートワークの終了により地方でのIT誘致の在り方が変化するとご紹介しました。もっとも懸念されるのは活発だったIT誘致の動きが鈍化し、都市圏への一極集中が再加速するケースです。しかし総務省が発表したデータからは、脱コロナにより人口の都市圏一極集中が再度増加傾向にあることがうかがえます。

住民基本台帳に基づく2023年の人口移動報告では、東京都は転入者が転出者を上回る「転入超過」が6万8,285人を記録。これは前年の3万262人に続き2年連続の増加です。同データからは東京のほかに、神奈川、埼玉、千葉、大阪、滋賀、福岡の6府県が転入超過にあり、都市圏への人の動きが加速している実態がうかがえます。

一方で残りの40道府県は転出超過(転出者が転入者を上回る)の状態にあり、人口が地方から都市圏へ流出しているのが、あらためて浮き彫りとなりました。

地方の人口流出は若年層が中心。これは企業側からすれば、働き手が不足することを意味します。これから地方への移転や開業を検討しているIT企業からすれば働き手不足は大きな懸念材料です。リモートワークの終了にくわえ、地方での雇用が見込めないとなれば、IT誘致にとってネガティブな材料となります。

3.海外からのIT人材受け入れが増加

ここまでIT誘致にとってネガティブな要素となるトピックが続きましたが、脱コロナによりポジティブな変化も起きています。その一つが海外からのIT人材受け入れ増加です。

コロナ禍以前からIT業界では、人材不足を補う手段として海外の人材に注目してきました。地方の自治体でも海外の人材受け入れや企業誘致に力を入れています。

5類移行後の入出国制限緩和により、各地でインバウンド特需が起きていますが、今後人材獲得の分野でも海外に注目が集まる流れはトレンドとなりそうです。

まとめ│IT誘致で地方は何を強みとするのか、より一層問われる時代へ

今回は2023年下半期の、地方でのIT誘致に関するトピックをご紹介しました。

脱コロナによりリモートワークの終了や都市圏への人口流出が加速するなか、地方のIT誘致ブームはかげりを見せ始めています。コロナ禍ではリモートワークを前提として誘致活動に取り組んできましたが、今後は「自分達の強みはどこにあるのか」より一層問われる時代が訪れます。

『地方でゆったりとしたワークスタイルを実現できる』といった抽象的なメッセージではなく、移転や開業時の助成制度やサポート体制の拡充など、具体的な取り組みを伝える(新たに整備する)努力が求められるでしょう。時代の変化にしっかり対応しつつ、能動的なアクションを起こす動きが、脱コロナ時代のIT誘致には必要となってきそうです。