宮崎県のIT企業誘致の現状は?地域ごとのトピックを紹介
宮崎県では近年、サテライトオフィスの開設やIT企業の誘致が活発に進んでいます。もともと農業や観光といった産業が盛んな地域ですが、ITという魅力的な職種が増えたことで、若年層の県外流出の減少や、地域経済の活性化が期待されています。
今回は宮崎県でのIT誘致や業界の現状を知るべく、地域ごとのトピックをご紹介します。
地域別に見る宮崎のIT誘致の現状
産業構造に関するデータを定点観測する「宮崎県産業連関統計表」のデータを見ると、IT関連の業務に該当する「情報サービス」と「インターネット付随サービス」に従事する従業員の数は次のような結果となっています。
部門 | 統計年 | 従業者総数 | 個人事業 |
情報サービス | 平成27年 | 2,669人(+670) | 102人(+35) |
平成23年 | 1,999人 | 67人 | |
インターネット付随サービス | 平成27年 | 614人(+341) | 103人 (+75) |
平成23年 | 273人 | 28人 |
参考データ:宮崎県産業連関統計表
情報サービス・インターネット付随サービスのどちらの部門でも、従業者総数と個人事業の人数が増加。これは宮崎県内全体でIT人材の雇用が増えていると考察できます。IT雇用の促進を後押ししているのが、県外企業のサテライトオフィス開設やITの企業誘致です。
では、IT誘致に関する県内の動向を地域別に見ていきましょう。
県央地域│宮崎市を中心にIT誘致が活発化
宮崎のIT誘致の拠点と言えるのが、宮崎市を中心とした県央地域です。
宮崎市では2015年から中心市街地の空洞化や若者の県外流出の対策として、ICT企業の誘致活動に取り組んできました。中心市街地に10年間で3,000人の新たな雇用を創出する「”マチナカ3000″プロジェクト」を立ち上げ、IT企業への助成制度充実や積極的な誘致活動を展開。その結果2020年までに2,800人以上の雇用創出に成功するなど、地方でのIT誘致の成功事例にも数えられています。
大手企業のサテライトオフィスが進出しており、GMOやUUUM、DELLやZOZOといった多様なジャンルの企業が集まっています。
県南地域│日南市の取り組みが全国的にも注目を集める
県南地域では日南市の取り組みが全国的にも注目を集めています。
もともと江戸時代には南蛮貿易や琉球との交易の拠点として栄えた歴史情緒ある土地として知られる日南市ですが、近年は人口減少や高齢化、中心市街地の空洞化が深刻化していました。
転機となったのが2013年。若干33歳で日南市長に就任した﨑田恭平前市長の旗振りの元、地域創生事業を推進。民間企業との連携を図るなどして地域資源の掘り起こしや企業誘致に乗り出しました。とくに力を入れたのがIT企業の誘致。2022年までに15社のIT企業を誘致し、170人の雇用創出に成功しました。
県北地域│スマートシティ構想で新たなビジネス創出を目指す
県北地域では延岡市のスマートシティ構想が新たな雇用創出に繋がると期待されています。
延岡市は旭化成グループを中心に関連する企業が多く集まる工業都市です。製造業の雇用は多いものの、ITやデジタル関連の企業は少なく、若年層の流出や新たな産業の創出が課題でした。
そこで延岡市ではICT(情報通信技術)で地域の抱える課題を解決し、新たな価値を創出し続ける「スマートシティ構想」を推進。2021年には国交省の「スマートシティモデルプロジェクト」にも選定されるなど新たな取り組みを加速させています。
今後延岡市ではスマートシティ構想を軸に、デジタル技術を用いたさまざまなプロジェクトが予定されています。すでに「DX推進のための都内のIT企業から人材の派遣受け入れ」や「SBIホールディングスとのデジタル化推進に関する連携協定」といった取り組みを実施。将来的にはIT誘致やIT雇用の創出など、製造業だけに留まらない多様な産業構造の実現を目指します。
県西地域│都城市の企業が2020年に一部上場
宮崎の県西地域は農業や畜産が盛んな地域です。こうした背景もあり、これまではIT誘致や起業は少ない土地柄でした。
そんな県西地域で存在感を発揮しているのが、都城市に拠点を置く日本情報クリエイトです。不動産領域におけるDXを手掛ける同社は、2020年に東京証券取引所マザーズ市場へ新規上場を達成。宮崎県の上場企業はわずか6社ですが、その1つがIT関連企業から誕生したのは、県民から驚きを持って受け止められました。
まとめ
農業や畜産をはじめ一次産業が盛んな宮崎県ですが、近年は宮崎市を中心にIT誘致や起業が増えてきました。以前に掲載した記事でもご紹介したように、リモートワークの拡大やワークライフバランスへの取り組みが広がる中で、地方でのIT誘致は注目が高まっています。
宮崎市の事例では、多くのIT企業が集まることで人材の流動性や質が向上。新規で進出する企業にとって、メリットの大きい環境が整ってきました。今後はこうしたメリットを求めて進出する企業が増えると予想され、IT誘致による好循環が生まれています。