トライアンドエラーをできる仕事には価値がある|ライトライト齋藤氏対談
本稿は、株式会社ライトライトのnoteに掲載された記事の転載です。
「事業承継マッチングプラットフォーム relay(リレイ)」を運営する株式会社ライトライトは、2022年4月6日、累計1.3億円の資金調達を実施したことを発表しました。
2021年4月に投資を行っていただき、現在はrelayの顧問として我々を支えてくださる株式会社ミライラボの山本稔さんと代表齋藤がお話をさせていただきました!
8割の無駄を我慢できるようになるということ
齋藤:本日はよろしくお願いします!山本さんっていつから僕のこと知っていただいてました?僕はアラタナで活躍されている山本さんのことは当然一方的に存じ上げていて、CAMPFIREで同じビルに入ってこられて、「あ、山本さんここにいるんだ!」って思ったのを今でも覚えています(笑)
山本:もちろん僕も齋藤さんのことは知っていましたよ。若草通でTシャツ着てる人(笑)
齋藤:その後僕がライトライトを起業したときにお声がけいただいたとき、どういうお気持ちだったんですか・・?
山本:まずは、新しいことに挑戦されるんだろうなという印象でした。トレンドは押さえているのだろう、上手くいかなくてもなんとかするんだろうなと思っていました。
齋藤:あのときお声がけいただいてとても嬉しかったんです。株式に関する苦労も周りから聞かされていたので誰でもいいということは全くなくて、経営者として尊敬できる方に教えを請いたいと思っていました。この人だったら良いなと思える方が3人いて、その中の2人が山本さんと須永さんでした。だから本当にありがたかったです。
山本:僕は、自分がわかることしかやりたくないんです。今のベンチャー界隈はどちらかと言うとエンジニア寄りですが、どの会社であっても営業力が肝要だと思っています。なので、基本的には「営業出身」ということが、投資したいと思えるかどうかの判断ベースにあるんですよね。営業出身者には数字を作る能力、なんとかする能力がありますから。
営業出身者で誠実な人、騙すことも騙されることもなさそうな人が僕にとってはベストかなと思っています。IT系で、かつ地方で展開しているそのような人は少ないですね。齋藤さんはまさにそこにハマりましたね。齋藤さんって飛び込み営業をやったことはありますか?
齋藤:もちろんあります。
山本:飛び込み営業って、結構大事だと思っていて。今だとパワハラだと言われるかもしれませんが、飛び込み営業はいくら失敗したっていいじゃないですか。失敗すること、トライアンドエラーをすることが当たり前。僕はリクルート時代にそれを学びましたが、基礎的にそれをやっていた人は強いんじゃないかなと思うんです。
齋藤:僕もUSENで経験しました。あの頃は当たり前でしたね。
山本:ある意味では「まだ無い商品を売ってこい」みたいな部分もありますよね。営業を通じてお客さんのニーズを確認して、商品を作るという体験。これを体験できる機会が減ってきているのはかわいそうだと思っています。
齋藤:自分では、営業時代に胆力が鍛えられたと思っています。100件周ってダメでも101件目で契約できるかもしれないという感覚を常に持ち合わせています。自分で言うのも何ですが、そのおかげでビジネスをしていて総崩れするような状態がまだありませんね。
山本:多少崩れていても、崩れたと思ってないかもしれませんね。
齋藤:そこが、いい意味での鈍感さかもしれません。
山本:営業は、仕事の2割、場合によっては1割しか成約に繋がっていないということもよくあるでしょう。でも、8割の無駄を我慢できるようになるということなんですよね。事業も同じです。あとは、ライトライトが宮崎を拠点として取り組んでいる点も大切だと思っています。
知らないということは大事
齋藤:山本さんが宮崎でアラタナを起業した理由はどのようなものだったんですか?
山本:立ち上げのきっかけは、宮崎にずっといたいなと思ったことですね。元々三重県出身ですが、リクルートで求人に関する業務を通じて3年間宮崎の会社を見てきました。なかなか入りたいと思える会社はなくて、それでも宮崎にいたいな、リクルートみたいな会社って良いよな…作るしかないな。という考えに至りました。
齋藤:なるほど。
山本:IT企業って、ある程度こぢんまりすることも可能ですよね。15人位でも十分食べていけるビジネスを作れて、いい生活はできるでしょう。僕らは馬鹿だったから「1000人いくぜ!」と言っていました。それも、インターネットを知らない人たちだけで。電話営業で売れるだろうという考えで(笑)
齋藤:その、門外漢っぷりがよかったんでしょうね。
山本:業界について詳しく知っていたら、東京に支店を作って普通の会社になっていたでしょう。知らないということは大事ですね。
齋藤:そういう意味で、最近の人たちは怖がる印象があります。リスクを取りたくない、チャレンジしようとしない印象を受けますね。
山本:今はクラウドソーシングサイトも成長していて、起業しなくてもフリーランスでやっていけるという選択肢がありますからね。僕らの頃は、起業しか選択肢がありませんでした。サラリーマンか、起業するか。宮崎に理想の会社がないなら作るしかないという考えでした。今は宮崎には、選択肢がかなり増えていると思います。さらにリモートでの仕事も増えているので、起業だけが選択肢ではなくなっていますね。
齋藤:山本さんのように、若い人がこれから事業したい!という時に、支援できるというのは憧れがあります。しかも、ミライラボは創業を目指す人たちが集う拠点でもありますよね。思いついた考えを他の人に共感してもらったり、モチベーションがあるならその人にも参加してもらうような出会いも生まれますよね。
山本:その視点で、皆さんのお手伝いをさせてもらっています。自分より若い人たちと一緒にいると、僕も若い気持ちでいられます。
若者に、宮崎のかっこいい企業を見せたい
齋藤:山本さんには2週間毎にメンタリングしていただき、本当にありがたいです。初めての起業で右も左も分からなかったなかで、山本さんにレビューをいただけると気合が入るし気持ちが落ち着きます。
山本:本当ですか?(笑)嫌がられているだろうなとは思いつつも、役割としてお話させていただいています(笑)
齋藤:全然嫌がっていません、むしろ喜んでます。ルーティンのような感じですね。
山本:であればもっと嫌がられるくらいしないといけないですね(笑)でもルーティンって、すごく大事ですよ。
齋藤:最近山本さんが力を入れてることってあるんですか?
山本:僕自身でもコンテンツを作っていますし、最近は支援している会社で中高生向けの社会見学のコースを作っています。生徒さんが初めて訪れる会社は、かっこいい企業でなければダメだと思っていて、そういう会社を生徒さんに見てもらうようにしています。幼少期の原体験が魅力を感じられない企業で、ここに残りたいとは思わないですよね。むしろ早く宮崎を出たいと思うかもしれません。かっこいいオフィスを案内することで、その原体験を変えられるのではないかと思っています。僕自身も一流企業を見学して、憧れた思い出がありますし。
この5,6年の間に、宮崎県内のIT業界で働く人は3倍になっています。さらに今後まだまだ増えるでしょう。今の中高生たちが社会人になる頃、宮崎県内のIT企業を目指す方が増えるような活動を仕込みたいと考えています。未来への投資ですね。
齋藤:いいですね。未来や子どもへの投資を含め、宮崎全体の底上げにつながる、将来こうなると良いなというお考えはありますか?
山本:実は、すでに結構でき上がってきていると勝手に思っています。リクルートの頃から20年近く「雇用をどう作るか」と考える業界にいます。それは自分自身意義がありそうだと思っていて、それを実行しているというだけです。これが正しいかどうかもわからないまま、自分がやってきたことを続けてきて、今は形ができています。宮崎を含む地方にとって、以前はオフィスの問題がありました。しかし今はコロナをきっかけに、リモートワークの導入でその問題がなくなりました。今は、幼少期からIT企業について知ってもらうことが大事だと思っています。
東京だと、自分がやった仕事が実感としてはよくわかりません。宮崎では、自分がやったことが体感できますし、皆そのような自負を持っている気がしています。僕自身はリクルートでの原体験が大きいです。宮崎のタウンワークには自分が獲得したお客さんが載っていました。自分の仕事がまちに並んでいて、その冊子を手に取る人も見ることができました。このくらいのサイズ感が良いなと。宮崎は本当にちょうどいいサイズだと思います。
齋藤:それは思います。実感できる手触りがありますよね。東京だと誰がやっても同じで自分の代わりはたくさんいるって思いがちなことも、宮崎だと自分を持つことができて、貢献できてる感があると思います。それがないと続けていけないですよね。
山本:僕サーフィンするので、たとえば福岡ってすごくいいまちだけど波がないんですよ。宮崎は波があるじゃないですか。福岡はカリフォルニアにはなれないけど、宮崎は仕事と人さえ増えれば宮崎もカリフォリニアになれるわけです(笑)福岡は宮崎になれないけど宮崎は福岡にはなれるっていう。
齋藤:夢があります!そういうストロングポイント大事ですし、伸びしろを感じるっていうのはいいですね。
山本:インターネットに関連する仕事を軸に、マーケティングシティのようになると面白いですね。それぞれを担うパーツとなる人はいましたが、それを起業して形にする人がいないから僕が担おうと思いました。
齋藤:IT業界って、知らない人からすると「スキルがなければできない」という感覚だと思います。実際はそうではないですよね。見せ方をカッコよくして、「そこで働いてみたい」と思わせることが大切ですね。事業承継も「誰でもできる」というところまで持っていきたいです。
山本:異業種への転職と比べても、事業承継は「経験がなければいけない」という先入観がさらに強いでしょうね。
齋藤:そうですね。もちろん一部には特別なスキルを持つ人もいますが資格がいるわけではないし、誰にでもできる仕事だからこそもっとたくさんの人が参入して、高すぎるハードルを下げたいですね。開かずの扉を見て見ぬ振りせず、業界構造を変えていきたいです。
小さな事業者の血の巡りを良くする
齋藤:山本さんは、relayの伸びしろや期待値についてどう考えていただいてますか?
山本:事業承継のマーケットは大きく、すごく求められていると思います。既存のM&A仲介事業は大きな企業ばかり相手にしているので、小さな事業者の血の巡りを良くしてもらえると、社会のために良いと思います。
もうひとつは、齋藤さんから細胞分裂が広がっていくようなことを期待しています。relayに関わった人が齋藤イズムを継いで様々な場所で活躍するような。最近気付いた大切なポイントは「場数を一人ひとりにどれだけ提供できたか」ということです。トライアンドエラーをできる仕事には価値があります。失敗できる場所、チャレンジできる環境を整えることで人が育っていくんです。そのように考えると、relayは人が育つための要素を備えているのではないでしょうか。
齋藤:そういった意味でも、採用を頑張りたいですね。そういう人に届くようなメッセージをもっと発信しないといけないですね。今日はありがとうございました。これからもよろしくおねがいします!!