未経験の転職希望者に知っておいてほしい3つのこと

終身雇用が崩壊し、日本でも2人に1人が転職をする時代となりました。20代~50代を対象にした調査でも「転職・転職活動をしたことがある」と回答した割合は60%以上にのぼり、キャリアアップやライフスタイルに合わせて転職をするのは当たり前となっています。

一方で未経験の業界への転職はハードルが高いといったイメージが先行しています。希望する職種へのキャリアチェンジが叶わず、今の職場に留まったという声も多い印象です。

そこで今回は「未経験の転職希望者に知っておいてほしい3つのこと」と題して、転職活動で意識すべきポイントをご紹介します。

未経験の転職希望者に知ってもらいたい3つのこと

今回お伝えしたい、未経験の転職希望者に知ってもらいたいことは次の3つです。

  1. 転職先はすぐに見つからないのが「当たり前」
  2. 企業の採用担当者は「適性」を重視している
  3. 不採用で意外と多い「基本」が疎かになっているケース

1.転職先はすぐに見つからないのが「当たり前」

1つ目は転職先はすぐに見つからないのが「当たり前」ということ。

転職活動の躓きで多いのが、活動を始めればすぐに転職先が見つかるという思い込みです。たとえば、大学生の就職活動をイメージするとわかりやすいですが、新卒の就職活動でも数十社の入社試験を受けるのはよくあることです。何通もの「お祈りメール(※1)」を受け取り、何社もの面接を経てやっと内定を勝ち取ります。

これは未経験の転職活動でも同じで、いくら社会人としての経験があるとはいえ、簡単に転職先が見つかるとは限りません。とくに未経験での転職となると、即戦力の転職希望者との競争も生まれます。企業目線に立てば、教育期間やコストがかからない即戦力を選びたくなるのも無理からぬことです。

とはいえ、すぐに見つからないのが「当たり前」という現実を知っておくだけでも、少し気が楽になるのではないでしょうか。「そもそも私は難しい取り組みにチャレンジしている」と捉えれば、合否に一喜一憂せず前向きなスタンスで臨めます。

1社目がダメでも、2社目。2社目がダメでも3社目といった具合に、長いスパンで転職活動に挑むのが得策です。

※1:企業から送られる不合格通知。「今後のご活躍をお祈り申し上げます」という文言が添えられているため、お祈りメールと呼ばれる

2.企業の採用担当者は「適性」を重視している

2つ目は企業の採用担当者は「適性」を重視しているということ。

私もベンチャー企業の経営者として、「選ぶ側」として数多くの採用に携わってきました。その経験からアドバイスできるのは、企業の採用担当者は会社や業務との適性を重視しており、不採用があなた自身を否定するものではないという点です。

どんな企業も組織としてのカラーがあり、業務への向き不向きがあります。こうした条件と応募者の性格や適性を鑑みて、最終的な合否を決定していました。とくに私が携わっていたIT業界は適性がとくに重視されます。同じITの業界でも、求められるスキルは多種多様です。コツコツと真面目に作業を続けられる人材が求められる企業もあれば、独創的で行動力がある人材が求められる企業もあります。

また、企業の成長フェーズも採用活動に影響し、起ち上げたばかりのベンチャー企業であれば即戦力を求めますし、ある程度事業が安定した企業であれば未経験採用に力を入れます。

こうした背景を知っておくと、「IT企業に1社落ちたから、私はIT業界は無理だ…」と諦めるのが実にもったいないと理解できます。あくまでも企業とあなたの適性やタイミングが合わなかっただけ。本当にIT業界で働いてみたいと考えるなら、複数の企業への転職活動にチャレンジしてください。

3.不採用で意外と多い「基本」が疎かになっているケース

未経験からの転職で不採用となる場面で意外と多いのが、「基本」が疎かになっているケースです。

これも私の経験談ですが、履歴書がしっかり書けていない方が意外と多い印象でした。履歴書は自分が「何者であるか」「これまで何をしてきたのか」「なぜこの企業に応募したのか」をきちんと書面にしたものです。採用担当者はまずこの書面を通して、あなたという人がどんな人なのかを理解しようとします。

しかし、そもそも履歴書がしっかり書けていないと、担当者としてもあなたを理解するための情報が不足してしまいます。いくら面接で雄弁に語っても、履歴書の印象がどうしてもマイナスに働いてしまいます。相手に読んでもらうことを前提に、自分が何者であるかをしっかりと履歴書に記載してください。

また基本という点では、面接時の服装や挨拶といった部分で損をしている方も多い印象です。とくに未経験での転職では、前職の業界のルールやマナーが、転職先ではマナー違反にあたる場合があります。悪気がなく習慣としてとった行動で不採用となるのは、あまりにもったいないものです。今は手軽に情報が手に入る恵まれた時代。自分が希望する業界のルールやマナーを、事前に調べるのも容易くなっています。しっかりとルールやマナーをリサーチする手間を惜しまないようにしてください。

リスキリングは未経験転職の追い風となる

さて、近年社会でも注目のワードとして知られるのが「リスキリング(Reskilling)」です。リスキリングとは、新たな分野や職務で新しいスキルを習得することを指す用語で、日本政府も重点施策として予算を投じています。

日本は少子高齢化や人口減少を受けて、働き手不足が深刻化しています。また、DXをはじめ急速に進む情報技術の進化により、従来のスキルだけではビジネス環境の変化に対応できない人材が増えていきます。

こうした課題に対抗するために注目されているのが、リスキリングです。新しい分野や職務で通用するスキルを習得すれば、ビジネス環境の変化にも対応し、働き手にとってもキャリアアップや職業選択の幅が生まれます。

これは未経験の転職を目指す人にとっても追い風で、リスキリングにより主体的にスキルを身に付ければ、未経験での転職で有利となります。オンライン・オフラインを問わずリスキリングの機会や資金的援助も今後さらに増加すると予想され、未経験転職を目指す人にとってはまたとないタイミングです。

まとめ

今回は未経験の転職者希望者に向けて「知ってもらいたい」3つのことをご紹介しました。

働き手にとって転職が当たり前の世の中が訪れています。一方で、未経験の転職希望者の動向を見ていると、「もったいない…」と感じる場面にも多く出くわします。今回はそんな「もったいない」場面を少しでも回避してもらうために、私の経験談も交えて3つのポイントを解説しました。

転職活動は決して容易いものではありません。しかし、1社や2社不採用だったからと諦めず、ぜひ粘り続けてください。世の中には数多くの企業があり、あなたの適性に合う企業との出会いがこの先に待っているやもしれません。