【2022年下半期】地方でのIT誘致に関するトピック

コロナ禍により企業の在り方が大きく変化したこの数年。多くの企業が新しい働き方を模索する中、IT企業は持ち前の機動力とデジタルツールの活用により、地方への積極的な進出や移転を続けています。

今回は2022年下半期のIT誘致に関するトピックの中から、株式会社SHIFTの動向をご紹介します。地方でのサテライトオフィス開設を続けるSHIFT。その狙いはどこにあるのでしょうか。

地方とIT誘致の関係性を考えるうえで、貴重な参考材料となる同社の事例をご紹介します。

ITソリューションの提供で急成長を続ける株式会社SHIFT

株式会社SHIFTは、ソフトウェアの品質保証を軸に、ITに関する幅広いソリューションを提供するIT企業です。

2005年9月の創業以来右肩上がりで業績を伸ばし、2014年東京証券取引所マザーズ市場に上場。2019年に第一部への上場市場変更を行い、2022年4月にはプライム市場へ移行を果たしています。

直近の2022年度まで13年連続売上高が前年比の150%を記録。グループの時価総額は5,000億円を超え、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けています。

そんなSHIFTの動向で近年注目したいのが、地方でのサテライトオフィス開設です。

地方への積極的な進出で事業を拡大

2022年の3月には中国地方初の拠点となる広島オフィスの開設を発表。翌4月には初の東北拠点として仙台オフィスの開設を発表しています。さらに2022年の12月には北信越地方で初となる新潟オフィスの開設を発表し、地方へと積極的な進出を続けています。

背景にあるのは、地方での優秀な人材の確保です。これまでの採用活動は、東京をはじめとした大都市圏での就業を前提としたものでした。しかしテクノロジーの進化により、テレワークやサテライトオフィスを拠点とした地方での就業が可能に。コロナ禍による在宅ワーク需要の高まりや、ライフスタイルに多様性を求める社会の流れも地方進出を後押ししました。

こうした流れを受けてSHIFTでは、都市圏だけでなく地方での採用活動を強化。相次ぐサテライトオフィスの開設はその一環で、ITの強みである「時間や場所に縛られない」働き方を全国へと拡大しています。

また、SHIFTではこれまでもテレワークを積極的に推進し、在宅でも最大限のパフォーマンスが発揮できる環境や仕組みづくりを進めてきました。こうしたノウハウは、各地のオフィスで採用され、確かな成果をもたらしています。

企業と社員の双方にとってWin-Winの関係が成立する

SHIFT側からすれば、これまでの「都市圏」という居住地に縛りに捉われることなく、地方でも優秀な人材を採用可能になりました。UIJターンや移住を目指す人材も、今後は採用のターゲットに含まれます。

また、オフィスを開設する地域の特色もメリットとなります。たとえば、新潟はIT・情報系の大学や専門学校が多数存在し、SHIFTが求める人材が多い土地です。この他にも自治体が誘致企業への助成金や援助に取り組み、税制上の優遇措置やオフィス開設のコストを負担するといった取り組みも、企業側にとって魅力的です。

では、社員側からすればどのようなメリットがあるのでしょうか。

まずライフスタイルやワークスタイルの選択肢が増えます。これまでは、結婚や子育て、パートナーの転勤や介護といったライフイベントの度に、転職や退職を選択する場面は少なくありませんでした。これはキャリアアップやスキルアップを目指すうえでは大きな障壁です。しかし在宅ワークの採用やサテライトオフィスの開設により、地方でも都市圏並みの業務経験と賃金を得られるとなれば、将来への選択肢が一気に広がります。

また、これまで都市圏への移住が難しく、キャリアアップを諦めていた人材にとっても、自分の暮らす土地で高いレベルの業務経験を積めるとなれば魅力的です。

このように、IT企業の地方進出は企業と社員の双方にとって、Win-Winの関係が成立します。

大手IT企業が地方への進出を加速。IT×地方はトレンドからスタンダードへ

今回は2022年下半期のIT誘致に関するトピックの中から、株式会社SHIFTの動向をご紹介しました。

SHIFTは昨年だけで広島・仙台・新潟の3拠点に新たにオフィスを開設しています。社員のライフスタイルやワークスタイルに多様な選択肢を提供し、地方での優秀な人材確保を目指しています。

大手のIT企業の地方進出では、GMOグループも積極的な動きを見せています。直近の動きだけでも、

  • 2021年 2月 宮崎
  • 2020年 11月 仙台
  • 2019年 2月 鹿児島
  • 2018年 4月 北九州

など、地方でサテライトオフィスを開設し、人材確保へ向けて動きを加速しています。

これまでIT企業の地方移転は、自治体の誘致活動や国の地方創生活動によるトレンド(=流行)的な扱いでした。しかしコロナ禍により人々の価値観が一変した今後は、IT企業の地方進出がスタンダード(=定番)な形として定着すると予想されます。

SHIFTやGMOといった大手企業の動きはそうした流れに沿ったもので、「IT×地方」の時代がいよいよ本格的に到来しそうです。